将来の期間に影響する特定の費用は、次期以後の期間に配分して処理するため、経過的に貸借対照表の資産の部に記載することができる(企業会計原則第三.一.D)、とされています。
ここで、「将来の期間に影響する特定の費用」とは、既に代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用をいいます。
これらの費用は、その効果が及ぶ数期間に合理的に配分するため、経過的に貸借対照表上繰延資産として計上することができる(企業会計原則注解15)、とされています。

会計上の繰延資産の範囲は、創立費、開業費、株式交付費、社債発行費及び開発費とされています(財務諸表規則第36条)。
一方で、税務上の繰延資産は、上記の他、以下の支出する費用のうち支出の効果が支出の日以後1年以上に及ぶもので政令に定めるもの、とされています(法人税法第2条24)。

1.公共的施設等の負担金

繰延資産の種類 繰延資産の細目 償却期間
公共的施設の設置又は改良のために支出する費用 (1) その施設又は工作物がその負担した者に専ら使用されるものである場合 その施設又は工作物の耐用年数の7/10に相当する年数
(2) (1)以外の施設又は工作物の設置又は改良の場合 その施設又は工作物の耐用年数の4/10に相当する年数
共同的施設の設置又は改良のために支出する費用 (1) その施設がその負担者又は構成員の共同の用に供されるものである場合又は協会等の本来の用に供されるものである場合 イ 施設の建設又は改良に充てられる部分の負担金については、その施設の耐用年数の7/10に相当する年数
ロ 土地の取得に充てあれる部分の負担金については、45年

(2) 商店街等における共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯等負担者の共同の用に供されるとともに併せて一般公衆の用にも供されるものである場合 5年(その施設について定められている耐用年数が5年未満である場合には、その耐用年数)

 2.資産を賃借するための権利金等

繰延資産の種類 繰延資産の細目 償却期間
建物を賃借するために支出した権利金等 (1) 建物の新築に際しその所有者に対して支払った権利金等で当該権利金等の額が当該建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、実際上その建物の存続期間中賃借できる状況にあると認められるものである場合 その建物の耐用年数の7/10に相当する年数
(2) 建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金等で、契約、慣習等によってその明け渡しに際して借家権として転売できることになっているものである場合 その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数
(3) (1)及び(2)以外の権利金等の場合 5年(契約によって賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間)
 電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用   その機器の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が契約による貸借期間を超えるときは、その賃借期間)

 3.役務の提供を受けるための権利金等

繰延資産の種類 繰延資産の細目 償却期間
ノーハウの頭金等 5年(設定契約の有効期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び一時金又は頭金の支払を要することが明らかであるときは、その有効期間の年数)

 4.広告宣伝用資産を贈与した費用

繰延資産の種類 繰延資産の細目 償却期間
広告宣伝用資産の贈与費用 その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年)

5.その他事故が便益を受けるための費用

繰延資産の種類 繰延資産の細目 償却期間
スキー場のゲレンデ整備費用 12年
出版権の設定の対価 設定契約に定める存続期間(設定契約は存続期間の定めがない場合には、3年)
同業者団体等の過入金 5年
職業運動選手等の契約金等 契約期間(契約期間の定めがない場合には、3年)

注)支出額が20万円未満の少額な場合には、一時の損金とすることができます(法人税法施行令134)