認知症で判断能力が十分でない人は、本人保護のためその人が行った意思判断は民法上無効となります。
『できなくなること』の例
・各種契約行為
・預貯金の引き出しや振り込み
・不動産売買
・有価証券の売買 etc
このような認知症になってしまった人を法律面や生活面で保護する制度が”成年後見人制度”です。
成年後見人は、法定代理人として、本人のために本人に代わって「法律行為」「財産管理」「身上監護」を行います。
裁判所資料によると、成年後見人利用件数は平成29年には3万5千件ほどとなっており、500万人ほどといわれる認知症者数からすると利用割合は1%にも満たない状況になっているようです。
成年後見人の利用が進まない理由としては、家庭裁判所が選任した第三者がなる場合が多く、報酬もかかりますし、そして何よりも”本人のため”にしか財産を使えないことがあげられます。
つまり、”介護してくれる配偶者や子供のため”にお金を使うことが原則としてできなくなってしまうのです。
認知症になる前の元気なうちは、孫にお年玉をあげることもランドセルを買ってあげることもできたのに、認知症になってしまい、成年後見人制度を利用すると、家族が望んでも今まで通りのお金の使い方ができなくなってしまうのです。
現実には、銀行窓口ではなくATMから家族が少しずつ預金を引き出して、生活費としているのでしょうが、銀行窓口を利用した定期の解約や、本人名義の自宅の売却などは家族では代理ができないので、その場合には成年後見人を選任しなければできません。

では、将来的には高齢者の5人に一人が認知症となると予想されている中で、経済的な認知症リスクを低減することはできないのでしょうか?(続く)